2026.06.30
在宅医療栄養療法

不登校は治せる!【動画⑦医療従事者のみなさんへ】


*****本動画の概要*****
・栄養療法の文脈における副腎疲労症候群 90年代米国の医師J.Wilson
・癌、加齢、強いストレス状態などで起こる。実はありふれている。
・Addison病が副腎皮質機能の完全な荒廃であるとすれば、それらの原因に依る部分的な副腎皮質機能低下症もある。
・副腎皮質機能をより強く反映しているのは唾液中のコルチゾール濃度。
・ACTH,cortisolの基礎値では分からない。負荷試験をしても分からない。
・本症にコートリルを用いることの是非について。自身の経験から。
・副腎皮質機能低下症の症状は、うつ病の一部分とは言えない。抗うつ剤のみでの治療では時間がかかる。
 
●本動画は医療従事者のみなさんに向けたものです。不登校状態のお子さんを1人でも多く助けるため、全国のみなさんのお力が必要だと感じています。
○従来から副腎皮質機能の廃絶をきたす疾患はAddison病として知られていますが、これに対し、一連の動画で私が副腎皮質機能低下症とお伝えしているのは、言わば部分的な副腎皮質機能低下症です。Addison病が0だとするならば、30や50の機能に、一時的に陥ってしまっている状態です。
○1型糖尿病が膵β細胞の機能廃絶であるのに対して、2型糖尿病は膵β細胞の、言わば疲労の成れの果てであることとよく似ていると思います。2型糖尿病も、糖質の負荷を減らし、膵β細胞を休ませれば、改善することがあります。
 改めて考えてみれば、副腎皮質機能にも、0か100か、ではなくグレーゾーンがあるのは、ある意味自然なことだと思います。
 
●私は26年目の医師ですが、10年前に、様々な不調と質的栄養失調とは深く関係しているということに気づき、オーソモレキュラー栄養療法の勉強を始めました。○Orthoは整える、Molecularは分子、であり、病的な状態を分子レベルにまで遡って理解し、是正を図ろうというコンセプトです。栄養療法の世界では、「副腎疲労症候群」という概念が広く知られています。最初にこれを提唱したのはアメリカの医師、Dr.James L.Wilsonで、Adrenal Fatigue、副腎疲労は1998年に彼が造った言葉です。
○Dr.Wilsonは、過度なストレスが副腎を疲弊させ、従来の医学で診断されるAddison病には至らないものの、日常生活に支障をきたすレベルの食思不振や倦怠感、低血糖症などを引き起こす状態を、そのように名付けたのです。副腎が「疲労」しているという表現にはやや語弊があるのでは?と感じ、私は敢えて副腎皮質機能低下症と言い換えていますが、同じことです。約30年ほども前から、栄養療法の分野ではこの概念は知られていたのだ、ということをご紹介させて頂きました。
 
○栄養療法においてはこの副腎疲労を、これまでの動画でご紹介してきたマイナス要因の除去とプラス要因の追加、すなわち腸内環境の改善や必要な栄養素の積極的な補充、のみによって、薬物を用いずに、改善に導こうとします。しかし私自身の実感として、その方法で改善に導くことができる場合と、それだけでは難しい場合と、があると思います。
○一連の動画を通じ私が提唱しているのは、食事も摂れないような重症例の場合には、最初はコートリルを用いていいのではないか?ということです。
 
○コートリルや、デカドロン、リンデロン、などのステロイド剤を、進行癌の消耗状態で用いることは、一般的に行われており、効果が実感できることが多いと思います。あれについても、成因としてのストレッサーはやや特殊ですが、相対的に不足状態にある副腎皮質ホルモンを補うという点においては同じことだと思います。
 開業して高齢者医療に取り組む中で、「老衰」と十把一絡げにされている中にも、副腎皮質機能低下症の方がたくさんいることに気づきました。高齢者の場合には、分泌予備能が加齢性変化として生理的に低下していることが最大の要因と思います。膝関節や肘関節に、全身性の発熱を伴うような関節炎発作を反復する高齢者はいないでしょうか?そういった方の関節炎発作は、ステロイド剤を内用することで予防できます。食欲不振や元気がない、といった症状ばかりでなく、関節炎発作を反復する、というのも、副腎皮質機能低下症の1つのサインではないかと考えています。
●癌や加齢、加えて一連の動画で述べてきているような社会生活におけるストレス要因、が原因となって副腎皮質機能低下症を来している人は、実はかなり多いのであろうと推測しています。
 
○さて、栄養療法において副腎皮質機能低下症を診断する場合、補助的に行うことのある検査があります。それは唾液コルチゾール検査です。お示ししているように、通常は1日4回ほど唾液を採取して、コルチゾールの働きと日内変動を評価します。血清コルチゾール値ではなく唾液を用いる理由は、細胞内のコルチゾール活性を、より鋭敏に反映するのは唾液中のコルチゾール濃度だからです。本当に評価したい細胞内のコルチゾール活性は、血清中のフリーコルチゾール値と相関します。採血では痛み刺激でコルチゾール分泌が促されてしまうことに加え、評価しているのは血清中の総コルチゾール値であり、結合タンパクであるトランスコルチン(CBG)の変動等、他の要因の影響を受けます。
○とは言え、本検査は保険診療として認められていないという事情があり、私自身は殆ど行っていません。他の疾病が概ね除外できていて、朝起きられない、食べられない、立ちくらみがする、頭痛、吐き気がある、低血糖症をおこす、などの特徴的な症状のうち複数が同時にあれば、本症と臨床診断していいのではないかと思っています。
 
○時々、病院で検査をして貰いましたと、早朝一番のACTH、コルチゾールの基礎値を持参する方がおられます。しかしご存じの通り、明確な外れ値である場合を除き、内分泌学的な評価はワンポイントの値のみでは困難とされています。また、たとえ迅速ACTH負荷試験をしたとしても、「Addison病ではない」という評価になってしまい、治療に結びつきづらいというのが現状です。
○先述のように、コルチゾールの分泌には0か100かではなく、その中間があります。食べられない等の症状があり困っているのであれば、その中間に対しても積極的な治療を検討すべきだと考えています。
○Dr.Wilsonから連なる栄養療法の文脈においては、これまでの動画で述べてきたようにまずは引き算のアプローチ、次に足し算のアプローチ、と、どうして副腎皮質機能低下症に至ってしまったのかを踏まえた取り組みを行います。ストレス要因や炎症を除去する、補酵素を潤沢に供給して代謝の歯車を回す、といった取り組みは言わば分子レベル、根本の部分であり、加えてコートリルを処方するか否かはともかく、避けて通ることはできないアプローチです。
○栄養療法というと商業的なニュアンスを感じて拒否的になってしまう方もおられると思います。僕自身もかつてはそうでした。しかし明らかに治癒を妨げる要因を取り除く、明らかに不足しているものを補充する、というアプローチは極めて自然で根本的であり、実際にはこのアプローチのみで軽快してしまう場合も多くあることを考えると、避けるべきものではありません。
○医学教育、そして医療からは、この栄養という概念がすっぽりと抜け落ちてしまっていると感じます。説明がつきづらい、各科を渡り歩いても解決のつかない問題に直面することは避けがたくあり、私自身もかつてそのジレンマを抱えていましたが、栄養療法を勉強してみたところ、そういった困難な問題に全く別のアプローチが見えてきました。印象だけで否定することなく、虚心坦懐に、様々な意見に耳を傾けたいものです。
 
●これまで述べてきたように、僕自身は今では、積極的に診断をして積極的にコートリルの処方を行います。もちろん、最初はおっかなびっくりでした。しかし1例、2例と経験を重ねるうちに、足りないものを補った時のあの劇的な改善を、目の当たりにすることとなりました。また、用量についても、治療期間についても、経験を重ねるうちに多く、長く、なってきました。
○初期投与量は20-30mg、症例に依りますが維持量の多くは30から50mgです。この量を、少なくとも数ヶ月間、多くの症例では半年間から1年間ほど用います。必要な量、十分な期間、用いないと、視床下部・下垂体へのNegative Feedbackが解除されず、症状が容易に再燃してしまいます。特に暑い夏や寒い冬は要注意です。
○一部の方は、ステロイドの副作用についての懸念を口にされます。しかし実際には、この治療を始めてこの方、例えば易感染性や、糖尿病の発症、などといった副作用で困ったことは1回もありません。足りないものを補っているに過ぎないからだと考えています。足りなくて困っている段階で過剰を懸念するのは、杞憂というものだと思います。
 身体の回復とともに、相対的に補充が必要量を超えてくると、過剰すぎる食欲や体表面の浮腫、といった問題はあります。その時には粛々と減量すれば、なんの問題もありません。1ヶ月で10mgずつなど、ゆっくりと減量を図る方がいいと思います。
 
●来院される方々に特徴的なことには、これまで述べてきた副腎皮質機能低下症には、しばしば精神的な症状が合併しています。抑うつ気分や不眠、不安・パニック、聴覚や光覚への過敏、頑なさやこだわり、といったものです。
○DSM-5における大うつ病の診断基準9項目のうち、1項目には体重や食欲の変化、また別の1項目には易疲労性または気力の減退、とあります。私自身の考えですが、これらの項目で表現されている症状は神経伝達物質の過不足、所謂モノアミン仮説で説明されるようなものではなく、副腎皮質機能低下症に依るのではないでしょうか?即ち、旧来から「うつ病」とされていた中に、副腎皮質機能低下症は含まれていたのではないでしょうか。
 
○不安や不眠、パニック発作、強迫性、視覚・聴覚過敏、などの症状を伴っている場合には、抗うつ薬物療法を併用することもあります。これについては、別の動画で詳しく述べたいと思います。私個人は、セルトラリンを25mgから開始して漸増。必要に応じてミルタザピンを7.5mgの少量から併用することが多いです。
 若年者に抗うつ剤を用いることを逡巡される方も多いと思いますが、基本的にはコートリルと同じく、症状が緩和してきたら減らして中止に向かえばいいだけではないかと考えています。引き算、足し算、のアプローチに並行して取り組むことは言うまでもありません。
 
○精神的な症状が目立たず、コートリルのみで治療する場合も、エネルギー不足が目立たず抗うつ剤のみで治療する場合も、あると思います。一方で、両者ともに積極的な治療を要する場合もあり、むしろその方が多いのではないかという印象を受けています。もちろん、どんな症状であっても、根本へのアプローチは共通ですし、前提として必ず取り組まねばなりません。
○なぜ副腎皮質機能低下症と精神的な症状が併存していることが多いのか?自身の中でもまだ考えはまとまっていませんが、質的栄養失調と腸内環境の悪さ、この2つが、これらを一元的に理解するためのキーワードであろうと考えています。別の動画で述べますが、増加し続けている神経発達症との合併も非常に多く、根底でこれらは繋がっているのだろうと推測しています。

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