2022.10.25
栄養療法

食の取り組みで落ち着きのなさが治ってきた7歳女児(前編)

【初診時の症状などについて】

 母に伴われ当クリニックの栄養療法外来を初診した7歳女児。

 状況にそぐわない年齢不相応な落ち着きのなさ、大きな音などへの知覚過敏、パニック(注射等のストレスに過剰反応)、チック様の常同行動、コミュニケーションの困難(いじめられていたことがあり、友人が少ない)、朝起きづらい、等の症状があるのだという(母の申告)。

 診察室ではおとなしく、目を合わせて当方の質問に適切に答えることができた。とても知的に高い印象。

 一方、採血の際にはパニックとなり暴れ回っており、「これか」と思わざるを得なかった。

【食事について】

タンパク質が摂れているかどうかをまずは確認した。卵や魚など、むしろ好きでよく食べているという。

しかし母が体調を崩し調理が滞ったことを契機に、朝にコーンフレークなどを食べるようになった。グルテンフリーカゼインフリー(GFCF)にはまだ取り組んでいないとのことであった。

(それまでの食事内容の詳細については後編に)

【指導内容】

 なにを摂取するか以前に、まずは引き算の考え方が大事です。GFCFには真っ先に取り組むべきです。

 それを前提に、食事からのタンパク質摂取量を可能な限り増やしましょう。

 糖質の摂取は血糖値の変動を通じ、精神的不安定につながることがあります。甘いジュースや菓子類などの単純糖質は、なるべく控えましょう。

【初診から2ヶ月後、3回目の診療内容)

 夏休み中、GFCFを励行できていた時にはなかった問題が、始業して食餌制限が緩んだことで、はっきりと起こってきているという。

牛乳を飲む、菓子を食べる、などした後のかんしゃく、強い不安(両親に愛されていない)、聴覚過敏、全身皮膚の痒み、等。

→再摂取したことにより、グルテン、カゼインへの不適応が明らかとなった。

GFCFが治療的意義を持つ旨、学校提出用の診断書を作成した。

ナイアシンアミド、Vit.D、鉄等のサプリメントを購入したが、激しい抵抗に遭い服用させられなかった由。

【初診から3ヶ月後、4回目の診療内容】

 食餌療法を実践し続けた結果、

・腹痛や嘔気・嘔吐がなくなった。夏休み明けに学校で牛乳が提供された際にこれらの症状が出ていた。よく聴取すると、母も、その母も、牛乳は苦手だったのだという。

・味覚が豊富になった。もともとは偏食が著しかったが、様々な食品に興味を示し食べられるようになった。貝類や金時草、ひじきなどが好き。

・ドライスキンと湿疹が軽快した。牛乳を飲んでいる時は外耳道~耳介の痒みがあった。

・集中力にまとまりが出てきた。手当たり次第に、著しい早さで本を読む。目にするあらゆるものを覚えてしまう。(本の名前や駅名など) バイオリンでオーケストラに出演する予定。

・鉄棒、跳び箱、競争など、人並み以上にできる。(ただし転倒が多い?)

・落ち着きのなさも緩和し、そわそわしなくなった。集団で“浮いている”と感じられなくなった。

・パニックも緩和した。先日は初めて、インフルエンザ注射ができた!

等、年齢相応以上の発達が短期間に明らかであるという。

高タンパク・低糖質食+GFCFの結果、マスクされていた本来の高い能力が表出し始めているものと推測された。

サプリメントはやはり苦手であり服用できていないというが、改善が明らかであるため、あまり拘らなくてもいいのではないでしょうか?と話し合った。

※後編に続く

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