死に水を取る
「(妻が)死ぬまで2時間ほどだけやけど、手を握っていてあげることができました」と満足げな男性。
当クリニックは人生の最期、臨終までお伴させて頂くことが多いのですが、第三者である医師にとって死亡を確認しこれを家族に宣告する行為は、つい形式的になりがちです。
“その時”が近づいていることを適切なタイミングで家族に伝え、
苦痛を最大限に緩和すべく先回りして鎮痛鎮静を行い、
「今晩が山だと思います」と予告し。
そこまでが医療の仕事であって、臨終はその事実を伝えるだけ、という気持ちになりがちなのです。
しかし、
息が切れるその瞬間に誰と誰が立ち会っていたのか、
その状況はどんなものだったのか、
自分がなにをしてあげられたのか。
を重要視する方はとても多いことをたびたび実感します。
別れの瞬間、
魂が肉体を離れ天に昇るその一時に、
きちんとお別れを告げることができたのかどうか。
ここにこだわりを持つのが、
人と人との強い繋がり、情念というものなのだなと思います。