気分障害が食事と運動で改善した若い男性
30代の男性。
抑うつ気分、頭呆感、不眠、対人関係の苦手、を主訴に当クリニックの栄養療法外来を初診。高学歴の方であるがこれらの症状のために仕事に行けなくなり、2年間にわたり自宅で療養しているとのこと。精神科に通院し、2種類の抗うつ剤を処方されていた。
「食欲はとてもあって、食べたくなり我慢できない」と初診時の体重は82kgのふっくら体型。20歳頃の体重は64kgほどだったというから、20kg近く太ってしまっていたことになる。
型の如くまずは腸内環境。食物アレルギーの可能性についてのチェック。GFCFの指導。FODMAPは? しっかりと取り組んだグルテンフリーで、下痢とfoggy brainが改善した。
次には高蛋白・高脂質食の指導。糖質は後から控えめに摂取を。清涼飲料水はやめましょうね。散歩などの軽労作から徐々に負荷を増やして。筋トレをお勧めします。
1年2ヶ月の経過で、この方はクスリを全て中止して当クリニックを卒業された。「県外で就職し、自宅は離れる予定です」と精悍な顔つきとなった若者は言っていた。
指導内容はずっと上記の通りであったが、初診から1年近くの時点で急に痩せ始め、精神的にも身体的にもぐっと向上した。ご自身の中でなにかのスイッチが入ったのだろう。
卒業時点の体重は75kg。反省は、ちょっと時間がかかってしまったこと。当初からもっと強く、糖質制限の部分に介入すべきだったのかもしれない。毎日の生活のことだから、続けることが大事だから、とつい、こちらも生活への強い介入には遠慮をしてしまう部分があるが、問題を長引かせてしまっているかもしれない。
現代を生きる我々は糖質ばかりを摂り過ぎている。30歳も過ぎると徐々に基礎代謝が減ってくるのでこれが、肥満という目に見える形で顕在化する。同時に、肥満しているということは、肝心な栄養素が摂れていないということ。なんらかメンタルの問題がある場合、そのことにまずは思いを致すべきである。
この方にはプロテインパウダーはお勧めして摂取してもらったが、サプリメントの類いは用いていない。最も“効いたな”と感じたのは、グルテンを含む食品と糖質の摂取制限、朝食代わりのバターコーヒー、そして運動、である。そんな簡単なことでスマートになってメンタルが向上しクスリが中止できるのだから、悪いことはなにもない。
このアプローチを経ずに、いきなりクスリを飲み始めるのはいかがなものか。一時的に効果が得られても、根本に働きかけない限り、精神科通院とクスリが止められなくなってしまう。
※栄養療法は自費診療です。