2025.10.05
栄養療法

脂肪肝は体内に抱えた炎症 40代男性 副腎皮質機能低下症+パニック障害

公務員の40代男性。妻に伴われ初診。

管理職への昇進や上肢との軋轢、震災対応、など、仕事上のストレス要因が強かった。

2週間前から、パニック傾向(渋滞で気分が悪くなる)、抑うつ気分(「消えてしまいたいような気分」)、食思不振、動悸、などが出現してきたため初診。

大きな病院で頭部CT、血液検査(甲状腺機能を含む)などしたが、原因となる所見は指摘されなかった。

ストレスを自覚すると糖質の過食に走りがちであったといい、脂肪肝があった。

副腎皮質機能低下症+パニック障害(うつ病)と臨床診断し、その旨を説明した。

ストレス要因からは一旦離れるべきこと、血糖値の不安定そのものがストレスと同じ意味を持つこと、につき説明し話し合った。

→1ヶ月間は休業しますと決断された。

副腎皮質機能低下症に対してはコートリル20mg/朝。

パニック障害、うつ病に対してはジェイゾロフト25mg/夕。

不安、不眠時にはデパス錠0.5mgの頓用。

【1週間後】

不安、不眠が未だ強く、生活を障害している。

今はまだクスリをしっかりと使うべき時期です。デパス錠0.5mgの頓用回数は増えても構いません。

余計なことを考えず、ネットでいろいろと調べすぎず、心身を静養させましょう。

ジェイゾロフトは50mgに増量。

タンパク質の摂取量を増やして。

鉄はサプリメントで開始して。

【2週間後】

全体として改善基調。

食欲は改善してきたため、タンパク質の摂取ができてきている。

夜間睡眠の質が低いといい、リフレックス7.5mgの併用を開始。

【3週間後】

食欲は安定、睡眠の質も改善した。

デパス錠0.5mgの頓用が必要なくなってきた。

コートリルは20→10mg/朝へ。

職場でのストレスに加え、糖質の過剰摂取とその結果としての脂肪肝、いずれもコルチゾールを浪費してしまう要因だったと思います。

【4週間後】

糖質の摂取を控えてタンパク質の摂取を励行している結果として、体重が5kgほども減ったと笑っておられ、余裕が感じられる。

一方、「コートリルを減量したタイミングで数日間、少し調子が上がらないと感じた」とも。

→復職を控えていること、また低血糖症様の浮動感もあり、コートリルは20mg/朝に再増量。

【6週間後】

復職して2週間。大きな問題なく勤務できている。

体重はトータル7kg減。

タンパク質ばかりでなく脂質の摂取を励行することについてもお勧めした。

サプリメントの利用、鉄に加え、Mg、B50、ナイアシン、ビタミンC、を服用すればなおいいのでは。

【8週間後】

調子は良好。

採血の結果、AST32/ALT64 Hb15.7/MCV90 Fe58/ferritin242.8。 

まだ脂肪肝がありそうです。鉄の数値からは慢性炎症の潜在が窺われます。

肥満、脂肪肝の解消がやはり必要です。

【10週間後】

コートリルを減量してみたが食欲は十分にあり。

→コートリルは中止へ。

抗うつ剤等も中止の方向で。

一旦終診。

【27週間後】

再び易疲労感や食思不振があると再診。

(手持ちの)コートリルを服用してみたところ、明らかに食欲が改善したと感じられるという。

不調の要因として、冬の寒さや業務多忙、正月の食生活の乱れ、などを挙げておられる。

→コートリル20mg/朝を再開。

【30週間後】

コートリルは漸減中止し得た。

症状の改善に明らかに有効だったといい、調子は元に復している。

7kg減った体重は下げ止まり維持しているが、まだ肥満状態と言える。

→減量しないとまたこのようになってしまいます。

食事の回数を減らす、バターコーヒーなど脂質を上手に利用する、などの工夫で減量を図りましょう。

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肥満、脂肪肝、血糖値の乱高下はいずれもコルチゾールの浪費、結果として副腎皮質機能低下症に繋がってしまう。

根底にこれがある以上、糖質の摂取を思い切って減らし、減量を図ることは治療のために欠かせない。

我々の本来の食欲はタンパク質、脂質の摂取によって充足されるものであるが、多くの人は血糖値の上昇を食欲の充足であると誤って認識してしまっている。

これが大きな問題である。

まずは、血糖値を変動させないことに身体を慣らさねばならない。

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