ポジティブなことだけを
加齢と認知症の進行に伴い、認知の変動や食思不振が顕在化してきている92歳の女性。徐々に眠っている時間も長く、いかにテンションを上げるかが目下最大の課題ですねと、家族と繰り返し話し合っている。
先日デイサービスで、SpO2値が低いことと、尿の色が濃い(肉眼的血尿?)ことを指摘された。主治医に報告して相談してくれと言われたのだと、家族は混乱して話がごちゃごちゃになっている。ハアハアしたり、下腹部を痛がったり、といった症状はない。
看護師や介護士は患者を丁寧に観察して、異常所見があれば医師に報告することを業だと考えており、報告をすることそのものは全く間違っていない。しかし異常所見を指摘することは患者の年齢や状況を踏まえ、かつ相手を見て行わないと、報告された家族は情報過多で混乱を来してしまう。
高齢者になればなるほど、探せば探しただけなんらかの所見はある。そのたくさんの情報を交通整理して、本当に重要な所見だけをいかに分かりやすく患者や家族に伝えるかが、医療従事者の力量というものだと考えている。
介護の現場で日々、親身に高齢者の世話をして働く方々を、いつもすごいなあと眺めている。しかし一方で、彼ら看護師や介護士は全く悪意なく、患者をこうして怖がらせていることがある。
悪いところを指摘し怖がらせるのは、よそう。リスクの過大評価はやめよう。血圧値が150mmHgを超えても元気そうなら入浴はできるし、SpO2値が低くても呼吸が荒くなければ、少なくとも急ぐようなことではない。
自身も歳を取ってきた。批判を恐れず自身の信ずるように行動しようと決めているから軋轢はあるが、敢えて批判的なことは聞きたくない。いくつになっても、人は褒めて欲しいものだし、ポジティブなことだけを耳に入れたいもの。
最近はつくづく、自分のこととしてそう感じている。