2024.12.12
在宅医療当クリニックについて栄養療法

クリニックで治せる不登校

小学校から大学まで、10歳代、20歳代の方に、「学校に行けない」方は驚くほど多いんだなと感じる。

当クリニック外来を受診されるからである。

この1年間くらいの間に受診され、学校(または社会)復帰を果たした方々の中から1名をご紹介する。 (個人が特定できないよう、一部改変しています)

【18歳女性】

((初診))
約1年半前、3回目のコロナワクチンを接種した頃から、朝起きられない、目まい、頭痛、難聴、倦怠感、夜間不眠、抑うつ気分、等の症状が出現してきた。

増悪要因は低血圧と月経。

以後、約2年半にわたり、複数の医療機関で検査や投薬を受けてきたが軽快しないため、当クリニックを初診。

持参した昨年の検査結果;

BUN7.8/Cr0.54 Alb4.8 Hb13.0/MCV85.6 AST19/ALT14

→鉄とタンパク質の不足が明らかであり、これら症状の根本原因と思いますと説明した。

朝に調子が悪く昼や夕に少し調子が上がること。

喫食量が減っていること。

その他、全体像より副腎皮質機能低下症と臨床診断した。

→コートリル20mg/朝を処方した。

GFCF(グルテンフリー・カゼインフリー)の重要性につき説明の上、2週間の実践をお勧めした。

もともとパンやチーズが好きだったとのことであった。

((2回目))

コートリル内服開始に伴い少し食欲が出たが、月経が近くなるにつれ、あまり効果が感じられなくなった。
しかし指導に従い、タンパク質の摂取に取り組んでいる。

サプリメントの服用を開始した。(鉄、マグネシウム、ビタミンB群、ナイアシン、ビタミンC)
GFCFに取り組んだ結果、アイスクリーム(乳製品)を食べると体調が悪くなるのだと気づいたという。

抑うつ気分や不安感に対し、ジェイゾロフト25mg/夕(抗うつ剤)の投与を開始した。


((4回目))

COVID-19に罹患したこともあり、全体的な状況はあまり変わらないという。

朝は頑張って7-8時に起きて、コートリルを服用し、朝日を浴びましょう。
日中の労作を増やす。できれば軽い筋トレも。
夜は9時にはスマホを眺めるのを止めましょう。(ブルーライトは今が朝だというシグナルを送ってきます)

コートリルは20→30mg/朝へ。


((5回目))(初診から約2ヶ月)
この1-2週間で朝食が摂れるようになってきましたと笑顔。
運動にも取り組み始めたという。
タンパク質の他、脂質の摂取を励行することの必要性につき、改めて確認した。

当クリニックで初めての採血。
コートリルは30→20mg/朝に減量。



((6回目))

「良くなってきました」と表情は明るい。
夜間も眠れるようになってきたという。

L/D;BUN11.9 フェリチン30.1
鉄とタンパク質の不足が、原因の根本にありますと改めて説明し話し合った。
鉄のサプリメントは当面、少なくとも半年間は継続を。
タンパク質は体重g/dayまで、頑張って食べ上げる必要があります。


((7回目))
「横ばいです」と言いながらもにこにこ。
朝はバター。卵は毎食、摂取しているという。

最近は学校に行けているが、登校した翌日にはぐったりしているとのこと。
→これは体力の問題です。“食べて動く”のプロセスを繰り返すことでしか、回復は図れません。

((9回目))(初診から約6ヶ月)
コートリルは10mg/dayに減量を試みているが、大きな体調変化はなく順調。
話しぶりや髪型など、18歳らしいと感じられるようになってきた。
ジェイゾロフト25mg/夕は継続中。

副腎皮質機能低下症を来す疾病として有名なのはアジソン病。迅速ACTH負荷試験などで診断される、絶対的なコルチゾール(F)の分泌不全。一方、アジソン病ほどにFが枯渇してはいないものの、ストレスに相応な量のFが分泌できなくなった状態、いわば相対的な副腎皮質機能低下症というのがある。黒までには至らない、いわばグレーの状態。

原因の如何に関わらず、このグレー状態のために、通勤や通学など社会生活ができなくなってしまう方は多い。高齢者であれば「老衰」と言われる中に含まれている。このような場合、Fを補いさえすれば、ひとまずの改善を図ることができる。

重要なのは、どうしてそのようなグレー状態に陥ってしまったのか? 今後そのようにならないようにするためにはどうすべきなのか? であるが、その答えの多くは、鉄やタンパク質、ビタミンB群を充足させること。過剰なストレスから少なくとも一旦は離れること。
この方法で、当クリニックを受診される多くの若い人は改善に向かっている。

本来であればクスリを使わずに、栄養や生活を整えることで解決を図るべきであるが、動けない、朝起きられない、という段階にまで至ってしまっているものを、指導だけで改善に導くのには相当な時間がかかる。

「クスリは使うが、これをなるべく早く止めるための栄養、生活の改善だ」と指導しながら薬物療法を併用するのが最短距離である。

学校に行けない主な原因が、学校での人間関係や家庭環境といった要因でないとすれば、このメソッドで改善する人は多いはずである。

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